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●医療法人栄仁会 宇治おうばく病院 松田匡弘(作業療法士)
このたび、大阪・高槻で開催された第34回日本精神科救急学会学術大会に参加させていただきました。
私は宇治おうばく病院の精神科作業療法室で勤務しており、精神科救急病棟での作業療法業務を担当しています。今回が初めての精神科救急学会への参加であり、精神科救急・急性期医療に携わる多くの専門職が集まる場に、やや緊張しながら会場へ向かいました。
大会期間中は2日間とも雨でしたが、会場ではシンポジウム、講演、ポスター発表、ランチョンセミナーなど、精神科救急・急性期医療をめぐる活発な議論が行われていました。第一線で実践されている先生方の講演や発表を直接拝聴し、日頃の臨床を振り返るとともに、新たな視点を得ることができました。
今回、私は「精神科救急・急性期病棟退院患者における再入院の時間的特徴と関連要因の検討―統合失調症および感情障害の生存分析による比較―」という題目でポスター発表を行いました。発表会場は非常に熱気があり、緊張も重なって大汗をかきながらの発表となりましたが、多くの方に足を止めていただき、さまざまなご質問やご意見をいただくことができました。研究内容について多角的なご指摘をいただいたことで、自分たちの取り組みを客観的に振り返ることができ、今後の臨床を考えるうえでも大変貴重な機会となりました。
学会を通して特に印象に残ったのは、「顔の見える関係」の重要性です。医療現場ではAIやDXの導入が進み、情報共有や業務の効率化が図られています。一方で、対象者の治療や生活について、支援者同士が直接顔を合わせて語り合い、それぞれの専門的な視点を持ち寄ることの重要性を改めて感じました。また、“Nothing About Us Without Us”という言葉に示されるように、支援者だけで今後の方向性を決めるのではなく、本人の思いや希望を確認しながら、ともに考えていく姿勢が重要であることも印象に残りました。
特に、精神科救急・急性期における「意思決定支援」については、治療方針の決定や退院先の選択といった重要な場面だけではなく、入院中の日々の生活にある小さな選択そのものが意思決定支援の機会になることを学びました。急性期では、症状や安全確保の必要性から行動が制限される場面もあります。そのような状況においても、本人が日々の生活の中で選択し、自分の意思を表明する機会をどのように支えていくのかが重要であると感じました。
多職種連携については、回診、朝礼、カンファレンスなどを目的や時期に応じて設定するとともに、対象者だけでなく、支援する職員自身の不安や困りごとも共有し、チームで支えることの重要性が示されていました。今回の学会参加を通して、対象者の治療や退院後の生活の方向性を把握したうえで、作業療法の場面で得られた生活上の変化や評価の視点を、より積極的に他職種へ伝えていく必要性を感じました。作業療法士として、日々の小さな変化や本人の選択を捉え、それをチームに共有することも、自分に求められる役割の一つであると改めて認識しました。
初めて参加した精神科救急学会でしたが、最新の知見を得るだけでなく、自身の臨床を振り返り、精神科救急・急性期における作業療法の役割について考える貴重な機会となりました。今回得た学びを日々の臨床に生かしていきたいと思います。
最後になりましたが、このような貴重な学びの機会を与えてくださった大会関係者の皆さま、また、発表に際して貴重なご意見やご助言をくださった皆さまに、心より感謝申し上げます。
●大阪医科薬科大学神経精神医学教室 大学院 髙木雄貴(医師)
この度、2026年9月26日・27日に開催された第34回日本精神科救急学会学術総会に参加させていただきました。今回は大阪医科薬科大学が主催となり、当院精神神経科教授の金沢徹文先生が大会長を務められました。会場は本学の所在地でもある高槻市であり、医局員や関連病院の先生方をはじめ、他大学病院や精神科病院の医師、心理士、看護師、精神保健福祉士など、多くの職種の方々が参加されていました。また、これまで本学会の理事長を務められた杉山直也先生にとって最後の学術総会ということもあり、会場は連日、多くの参加者で賑わっていました。
私は会場担当であったため、多くのシンポジウムや講演を拝聴する機会に恵まれました。今回の学術総会を通して、特に「効率化」と「客観性」という二つのテーマが印象に残りました。
一つ目は「効率化」です。26日の教育セミナー3「精神科救急医療を守り、育てる―現場で人を育て、チームを育てる―」では、精神科救急病院における医療者の「やりがい」や「業務負担」に関するアンケート結果をもとに、AIを活用した業務効率化の可能性について講演が行われました。また、大会長講演「精神科救急医療を守り、育てる」では、不要な業務を減らす「ダウンサイジング」や、業務・システムの効率化について問題提起がなされました。
私自身、精神科救急病院で勤務する中で、書類作成など診療以外の業務が医療者の負担となっていることを実感してきました。AIをはじめとするデジタル技術によってこうした負担を軽減し、患者さんと向き合う時間を確保することが、より質の高い医療につながるのではないかと期待しています。また、27日のシンポジウム12「身体科救急と精神科救急の地域連携」では、両者の連携について活発な議論が交わされました。「顔の見える関係」を構築し、精神科・身体科双方の患者さんが必要な医療へ早期にアクセスできる体制を整えることの重要性を感じました。
二つ目は「客観性」です。特に印象に残ったのが、シンポジウム8「精神科救急現場における意識の重要性」です。うつ病性昏迷、カタトニア、抗NMDA受容体脳炎、解離性障害など、意識状態の変化を呈する疾患について、鑑別、検査、診断、治療が紹介されました。精神科救急では、限られた時間と情報の中で適切な判断が求められるため、臨床症状や診察所見に加え、診断を客観的に補助する指標の重要性を改めて感じました。
中でも、篠崎元先生によるbispectral EEGを用いたせん妄診断に関する講演が印象的でした。脳波などの客観的指標を補助的に活用することで、診断をより多面的に捉えられる可能性があります。コンパクトな形態で迅速かつ簡便に検査できるbispectral EEGの今後の臨床応用が期待されます。
今回の学術総会を通して、精神科救急では「客観性」を担保しながら、「迅速に」「安価に」「簡便に」利用できる検査・評価手段が求められていることを強く感じました。今後、AIやバイオマーカー、脳機能モニタリング技術が精神科救急医療にどのように貢献していくのか注目していきたいと思います。一方で、AIや技術だけでは代替できない人と人との関わりも精神科医療の重要な要素です。テクノロジーと対人援助、そして身体科との連携をどのように組み合わせていくのか、一医療者として今後も考えていきたいと思います。
最後になりましたが、本学術総会の企画・開催に携わられたすべての皆様に、心より感謝申し上げます。
●医療法人稲門会いわくら病院薬剤部 武内正美(薬剤師)
この度、第34回日本精神科救急学会学術総会に参加する機会をいただきました。私は京都府京都市にあります医療法人稲門会いわくら病院の薬剤師です。2年前から救急病棟を担当しております。
精神科救急学会の学術総会へは今回初めての参加となりましたが、まず印象に残ったのは参加者それぞれの放つ熱気でした。精神科救急に対する熱い想いに随所で触れることができ、会場は活気にあふれておりました。また、各々専門性や立場は異なるけれども、根底にある「精神科救急医療を守り、育てる」意思は多くの参加者に共通しているように感じました。これだけの熱量が同じ方向を向いている一体感が心地よい、そんな会でありました。
シンポジウムはいずれも日々救急病棟で患者と接する中で感じていた疑問と重なる内容で、示唆に富んだものでした。過量服薬についてのシンポジウムでは、高校生の70人に1人が過去1年以内に濫用目的で市販薬を使用していることが示されました。私自身、過量服薬の問題を抱える方への対応に悩むことが多い中で、まず過量服薬という行為が本人の中で果たしている役割を洗い出し、人と人との間で満たされる体験を目指す方向性に共感いたしました。
薬物療法のエビデンス整理も興味深いものでした。エビデンスの中心となるのはランダム化比較試験(RCT)ですが、そこに組み入れられるのは基本的に同意能力のある人々であり、精神科救急で遭遇する多様で重症度の高い患者群にその結果をどこまで適用できるかという問題に繰り返し触れておられたのが印象的でした。RCTの結果は重要な治療根拠になるものの、結果をそのまま外挿できないことに留意しておく必要性を感じました。
印象に残った学びは認知行動療法(CBT)です。日常の患者対応の中で無意識に取り入れていたコミュニケーションにも、CBTの考え方と共通する部分があることに気づきました。時間を設定した正式なCBTでなくても、そのエッセンスを意識してコミュニケーションに取り入れることは、精神科救急の現場でも有用ではないかと感じました。日常の対応の中で行っていた関わりをCBTの考え方で整理し、意図的に活用できるよう学びを深めたいと思います。
自身のポスター発表では肺炎をはじめとした炎症性副作用とクロザピンの関連、および同薬の安全な導入をめざした増量法(Slow Titration)について発表いたしました。質疑では増量速度のさらなる減速や、先行研究の結果を踏まえた好酸球数の推移について意見を交わすことができ、今後のプロトコル改訂や評価項目を考えるうえでも有意義な意見交換となりました。
共通の悩みと共通の理想をもって取り組む皆様との交流を通じて、多くの学びと刺激を受けた学会参加となりました。今回得られた学び、さらには肌で感じた熱気を現場に持ち帰り実践に活かしていく所存です。
最後になりましたが、第34回日本精神科救急学会学術総会の企画運営を担当してくださった皆様に深く感謝いたしますとともに、本学会の益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。
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