第30回 日本精神科救急学会学術総会ルポ
公益財団法人復康会 沼津中央病院 梶浦裕治
●他の人のルポ  福間文さん  石井香織さん
 「やっぱり、学会はいい」
 初めて参加した日本精神科救急学会学術総会では、思いのほか楽しく充実した時間を過ごすことが出来ました。特に印象深かったのは、ブロナンセリン経皮的吸収型製剤の発表や、精神科救急医療ガイドラインの発表でした。発表を聞きながら、精神科医療の未来を思い描くことができ、日々に疲弊していた自分の中から湧き出る熱い感情に懐かしささえ覚えました。その感情はまさに、現地でしか味わえないものだと思います。会場の雰囲気、緊張感、高揚感。その空気を作り出す一員になっている自分。画面越しで触れる多くの学術的知見より、場と時間を共有し、共に作り上げる臨場感の中にこそ、より心が動かされるものがあると感じました。

 そもそも、私が本学会に参加することになったのは、2021年4月に病院長の号令で、身体的拘束ゼロプロジェクトが発動されたことに始まります。身体拘束ゼロの必要性は痛感していても、精神科救急の現場にいる自分には、現実と理想とのギャップをいかに埋めていったら良いかと途方に暮れることも多かったです。スタッフ感情を大切にしつつ、スタッフ力の強化を図る取組をしながら、多職種一丸となって「やれること」を模索していく日々。すぐに結果が得られないと頭では分かっていても、自分たちの進んでいる道が正しいのかと不安になりました。研修会・業務改善等を行う中で、スタッフの意識変容が徐々になされると、プロジェクトは急速に走り出しました。身体拘束をしない文化の形成に向けて当院は歩み始めています。今回、そのプロジェクトの過程をまとめることとなり、第30回日本精神科救急学会学術総会で発表することになったのです。
 
 発表することになったものの、日々の業務と新型コロナウイルスへの対応に追われる中、発表をまとめるのはまさに「試練」でした。何度も心が折れそうになりながら、なんとか当日を迎える事ができたのは、病院長を始め多くのアドバイスをくださった仲間のおかげだと思います。多くの支えがありながらも、学会に行くまでは「なんで発表するって言っちゃったんだろう」と正直思っていました。

 学会には、10年来の友人が参加しており、思いがけない再会ではありましたが、発表の練習にも付き合ってくれました。精神科医療を牽引する方々は多く参加している学会で、その内容の濃さに圧倒されながらも、楽しく過ごすことが出来たのは、友人の存在も大きかったと思います。学会では、多くの人と出会い、再会し、精神科医療について語り合うことができました。その時間は、何よりも刺激的で楽しい時間となりました。大変な思いをしながらも、学会に参加して本当に良かったと今は感じています。ただ一つ、懇談会がなかったのだけは残念で仕方ないです。次の機会があれば、ぜひ懇談会に参加して、より多くの人と語り合いたいと思っています。

 最後になりますが、多くの出会いと学びの場となった第30回学術総会の企画・運営を御担当いただいた皆様に深く感謝いたすと共に、本学会の益々の発展を心からお祈り申し上げます。
一般社団法人 日本精神科救急学会事務局
〒169-0072 東京都新宿区大久保2丁目4番地12号 新宿ラムダックスビル
株式会社 春恒社 学会事業部 内
TEL:03-5291-6231 FAX:03-5291-2176 E-mail:jaep@shunkosha.com