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●千葉県総合救急災害医療センター 青木真理子
この度、教育研修会in久留米に参加させていただきました。私にとって刺激と衝撃の連続でした。午前中の病院見学でまず驚いたのは、建物を含む敷地内の環境のすばらしさです。緑豊かな自然に囲まれた明るく開放的な雰囲気。洋風な建物、壁に飾られた数々の絵画や細部までこだわりを感じるデザイン性の高い内装。一般的に無機質である病院の印象とはかけ離れた環境で、自分が病院見学に来ていることを忘れそうになる程でした。また、個人的には職種を問わず誰でも休憩等に利用できるスペースが魅力的でした。
当センターと同程度の精神科救急病床数でしたが、平均在院日数や1日の外来患者数、デイケア・ナイトケアの参加者数等をうかがい、感嘆しました。バックべッドがない中、40日台前半の平均在院日数を維持している工夫は非常に興味深いものでした。急性期の状態にある患者に極力身体拘束をせず、手厚いケアを実施するために、基準より多い職員が配置されていました。短期間に集中的な介入をすることや外来、デイケア部門での支援が入院期間の短縮に繋がっていることが分かりました。特に、外来における「お泊り外来」の取り組みは目を見張るものでした。救急外来の一画にある部屋に短期間、夜間滞在することができ、ちょっと調子が悪い、助けてもらいたい、疲れたので休みたい、そんな夜にそのお泊り外来があるだけで、救われる方も多くいると感じました。その枠組みを有効活用することで短期間での再入院防止に繋がっていることが分かりました。
また、病棟内でうかがった「責任レベル」の設定が印象的でした。病棟内で開催されるPSミーティングの中で、自身の責任レベルの変更を提案し、他患やスタッフからの意見も聞く場があるとうかがいました。その後トラブルになるリスクもあるように思えましたが、そこには小さな社会を感じることができました。社会の中で生活する上では、どうしてもついてくる自己の行動の責任や他者からの評価を聞き、自身の状態と行動の枠を考え、主体的に治療と向き合い回復に向かっていけるシステムだと実感しました。冒頭にも触れましたが、緑に囲まれた環境だからこそより一層、自由に病棟の外に出たいと思えるのではないかと感じました(とは言え病棟の閉鎖エリアですら開放的な空間である印象でしたが)。入院外来共に手厚いケアを実践するマンパワーには当然費用がかかりますが、それを維持するため、職員一人一人が職種を超えて「満床死守」の合言葉のもと、ベッドコントロールを意識しながら日々業務にあたっているということにとても感銘を受けました。堀川先生の講演の中で、「リスクを負わないものは勝利を手にすることはできない」という言葉がありました。壁の絵画1つ取り上げても、リスクになり得るものは排除する文化の中にいると思いつかないような取り組みばかりでした。システマチックでありながら、フレキシブルな治療構造がうまく機能している現状を見ることができ、とても新鮮な気持ちでした。同じ日本の精神科救急を担う一因として、学ぶことの多い大変貴重な機会でした。
最後に、今回の研修会の企画・運営に携わられた皆様、のぞえの丘病院、のぞえ診療総合病院の皆様に感謝申し上げます。
●新生病院 廣瀬慧祐
今回、2026年6月13日に福岡県で開催された「教育研修会in久留米」に参加させていただきました。
のぞえの丘病院の門をくぐった瞬間、どこか懐かしい、温かみのある空気感でした。院内はまるで木造の小学校校舎を思わせる作りで自然光が差し込み、中庭や広場へとすぐにアクセスできる構造は精神科医療にありがちな「閉塞感」を微塵も感じさせなかったです。特筆すべきは、病棟内機能分化により1フロアが「観察室・PICU(精神科集中治療室)・閉鎖ゾーン・開放ゾーン」の4ゾーンに有機的に区切られている点。「今の自分が治療のどの段階」や「次にどこへ向かうのか」患者自身がロードマップを視覚的に理解し、自身の病期(ステージ)に合わせて病棟内を移動する。各ゾーンに専用のトイレ・浴室、デイルームがあって生活を完結でき、治療に専念できる環境が整えられていました。病棟に足を踏み入れると、さらに驚きが待っていました。スタッフは全員が私服で勤務しており、医療者と患者という非対称な関係性を、装いからフラットに崩していく試みに感じました。この日、病棟を案内してくれたのは、入院中の中学生くらいとみられる2人の女性患者。彼女たちは事前に自ら用意したメモ帳を、緊張の面持ちで真剣に読み上げていました。大役を終えた瞬間に見せた安堵の表情が印象的でした。総勢100名近い見学者たちが次々と往来する。そんな中、患者たちが動揺する気配は見られない。見ず知らずの人間が周囲を歩く環境に身を置くこと、その環境自体が、すでに「治療の一環」として機能していました。一歩外へ出れば、美しく整備された緑が広がり、等間隔に配置されたベンチは休息を促し、傍らを流れる小さな小川は、目だけでなく耳からも自然な癒しを届け、至る所に散りばめられた小さな工夫が感じました。
堀川直希先生の基調講演では、のぞえの丘病院が現在の姿に至るまでの軌跡と、地域資源の活用術が明かされました。
同院では、体育館、保育園、レストランといった施設を地域住民に広く開放し、交流会を重ねてきました。「まず知ってもらい、触れてもらう」ことで、精神科医療への心理的ハードルを下げてきたといいます。
さらに、現在注力しているのが「産後ケア」です。母親の精神的な治療を並行して行う産後ケアは、一般的な産婦人科での対応が極めて難しく、中には、出産当日に同院へ入院したケースもあるとのことです。母子を共に支えるセーフティネットとしての役割が、今まさに求められていると感じました。
小規模かつ高機能で多機能な病院へと発展を遂げたこの10年間で、スタッフ数を5倍以上に増加しました。1床の空床も無駄にせず、資源を最大限に活かして質の高い医療を提供し続けるため、職員全員が当事者意識を持ち、経営に参画する姿勢が貫かれています。
その基盤となる生命線が多職種連携であり、同院では、毎朝のミーティングで単なる「情報(データ)」の共有にとどまらず、スタッフ個々の「情緒(気持ち)」までも分かち合い、「まずは互いをねぎらい、いたわり、思いやる」ことを大切にしています。責任の所在を巡る議論に終始しがちな医療現場において、コミュニケーションを尽くして信頼関係を築く事こそが、真の多職種連携の始まりであると再認識しました。
パネルディスカッションでは架空(平均的な)の患者を多職種でどう考えながら介入しているかを紹介してもらい、充実した環境でも、それでも上手くいかない事が殆どだと言っていました。良くなり・悪くなりを何度も再入院を繰り返す過程も含め、スタッフ・家族・地域そして本人と共有し未来に向かって話し合いを重ねる様子を垣間見えました。
最後になりましたが、今回教育研修会の企画運営を担当してくださった全ての皆様に深く感謝いたしますと共に、皆様の益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。
●向陽台病院 河津宗太郎
この度、日本精神科救急学会 2026年度教育研修会 in 久留?に参加させていただきました。
私は熊本県にある向陽台病院の救急病棟、児童思春期病棟で精神科医として勤務しております。今回、以前からその評判を耳にしていたのぞえの丘病院、のぞえ総合心療病院(以下、両院)の見学ができると伺い、研修会に参加させていただきました。
本研修会は、両院の見学に始まり、あさかホスピタルの佐久間啓先生から同グループの広範な取り組みについてのセミナーをいただき、のぞえの丘病院院長の堀川直希先生から同院の沿革、救急病棟運営の理念、先進的で革新的な工夫の実践について学び、最後に同院の各スタッフより、架空症例を用いて同院における救急病棟の多職種連携、ミーティングの実際を学ぶという一日でした。
刺激に溢れ、学びと発見の宝庫となった研修会でしたが、特に印象に残ったのは、両院の見学でした。公園のように整備された両院の敷地内は、精神科病院の閉鎖感は微塵もなく、本格的な散策や外遊びができる開放的な空間でした。晴天の中、駐車場横のバスケットコートで二人の青年がバスケを楽しんでいたのが印象的でした。院内は全体に木の色調で揃えられており、病院というよりは上品な邸宅にいるような感覚を覚えました。外来診察室は、中庭へ一面の窓ガラスで視覚的につながっており、治療の透明性が象徴されているようでした。病棟では、各病棟の入り口に実際に演奏できるグランドピアノが置かれ、広々とした中庭にはバスケットコートや本格的な遊具が設置されていました。病室には患者さんごとに電子パネルが置かれており、内服中の薬、病歴や症状、睡眠時間などが常に確認できるとのことでした。昨今のSDMの流れも組んだ治療実践である一方で、毎朝の回診でパネルを通して全員で治療状況を確認する、という治療の構造化にもなっていました。両院では、力動的精神療法の考えが要所要所に取り入れられていますが、治療段階を発達モデルに見立て、「成長発達段階」と称して、行動範囲やスタッフの関わりの濃淡等を構造化する院内ルールもその1つでした。このモデルは患者さんとスタッフ双方にとって治療の現在地の明確化になりつつ、業務の円滑化にも寄与しているようでした。保護室を含むPICUの運用も印象的で、同ゾーンは前記の成長発達段階で2段階目の家庭の段階にあり、3:1のスタッフ配置を実現し、行動制限を最小化するように注力されていました。
最後に、馬によるホースセラピーについてです。のぞえ総合心療病院のカフェに併設された厩舎でポニー、サラブレッドなど複数の馬が飼育され、一般にも開放されています。のぞえ総合心療病院の見学中に、保護室の置かれているPICUから続く中庭に出張でポニーがやってきて、実際に撫で、餌をあげることができました。このポニーは普段から定期的に病棟へ来ているようで、見て触って、治療的な癒しを得ている患者さんも少なくないようでした。
両院では、刺激的で先進的な多方面の取り組みを導入し、精神科病院のあり方を拡張しつつも、医療の本質である治療にも正面から向き合い、当事者の力、集団の力、多職種の力、構造化された環境の力を巧みに使い分けながら実践が行われていました。
両院での実践をそのまま取り入れようとしても、一筋縄ではいきませんが、そのエッセンスは自院や自身の臨床において、少しでも取り入れていきたい所存です。最後になりますが、このような貴重な学びの機会を与えてくださった全ての関係者の方へ厚く御礼申し上げます。
●(株)TUNAGU ADL plus 黒木雄大
2026年6月13日に福岡県で開催された教育研修会に参加させていただきました。のぞえ総合診療病院およびのぞえの丘病院への施設見学、並びに講演・パネルディスカッションへの参加を通じて、精神科医療および地域生活支援に関する理解を大きく深めることができました。
まず、病院見学全体の感想として、当初抱いていたイメージが大きく変わった点を挙げたいと思います。見学前は、精神科病院は閉鎖的な環境であり、入院患者同士の交流は限定的であると想像していました。しかし実際に見学したのぞえ総合診療病院およびのぞえの丘病院では、ミーティングなどの場を通じて患者同士の交流が活発に行われており、想像以上に開放的で相互的な雰囲気が感じられました。また、想定していたよりも児童の患者の割合が高いことにも驚かされ、児童思春期病棟が果たす役割の重要性を改めて認識する機会となりました。
次に、パネルディスカッション「小規模多機能病院だからこそ可能な地域生活を支援する取り組み」について述べます。このセッションでは、医師、看護師、臨床心理士、精神保健福祉士といった多職種が、一人の患者に対して総合的かつ継続的に関わっている様子が、実際の事例を基に紹介され、各職種の役割分担や連携の実態を具体的に理解することができました。
近年では、発達障害や愛着の問題、家庭環境などの要因が複雑に絡み合う児童思春期の患者が増加しているとの説明があり、支援の難易度が一層高まっている現状を学びました。また、精神科の入院期間については長期化しやすいというイメージを持っていましたが、実際には平均して1か月半程度と比較的短期間であることが示され、認識を更新する契機となりました。
さらに印象的だったのは、入院期間中に行われる患者同士の交流(ミーティング)の存在と、その意義についてです。一般的には、児童思春期の患者同士が交流することでトラブルが増加することが懸念され、そのような機会を減らす方向に運用されがちであると考えていました。しかし実際には、交流の機会を積極的に設けることにより、看護師やソーシャルワーカーからの助言だけでは納得が得られにくい場面においても、患者同士の対話を通じて自然に理解や納得が促されるケースがあるとの説明があり、新たな視点を与えてくれるものとして大きな感銘を受けました。
最後に、基調講演「小規模多機能病院における精神科救急病棟のありかた」から得た学びについて述べます。特に印象に残ったのは、職員が毎朝多職種でミーティングを実施しているという取り組みです。このミーティングでは、業務上の情報共有にとどまらず、職員自身の情緒や気持ちについても共有がなされているとのことでした。これにより、職員が一人で精神的な負担を抱え込むことがなくなり、互いの精神的な支えとなっているという点が非常に印象的でした。精神的な負担の大きい現場においては、一人で問題を抱え込むことで気持ちが落ち込みやすくなる傾向があると考えられます。しかし、こうした感情を共有し、先輩職員からの助言や共感を得られる環境を整えることは、職員の離職率の低下とともに、職員一人ひとりの質の向上にもつながると感じました。この取り組みは、自施設においても積極的に取り入れていきたいと考えています。
今回の研修を通じて、精神科医療における多職種連携の重要性、患者同士の交流が持つ支援的な側面、そして職員のメンタルヘルスを支える組織的な取り組みの意義について、多くの学びを得ることができました。今後の業務においても、これらの知見を活かし、より質の高い支援の実現に努めていきたいと思います。
●放課後等デイサービス かぶとむしクラブさうすみのう教室 仲西沙希
今回、福岡県久留米市にて開催した日本精神科救急学会教育研修会に参加させていただきました。私は同市内の放課後等デイサービスに作業療法士として勤務しています。両病院の存在は知りながらも、その方針や地域での役割を深く理解する機会はこれまでありませんでした。今回の研修会は、放課後等デイサービスで働く作業療法士として精神科医療とどう関わっていけるかを考える貴重な場となりました。特にのぞえの丘病院院長堀川直希先生の基調講演「これからの精神科救急医療を考える~小規模多機能病院の取り組みから~ 小規模多機能病院における精神科救急病院のありかた」では、病院内の紹介や取り組みだけではなく「"地域生活支援システム"を構築することで早期に地域で生活可能」としていくこと、つまり開放ゾーンは地域も担える部分だということが印象に残っています。我々、放課後等デイサービスの事業所としても、その一端を担いつつ協同して久留米地域を支えていく一つの資源であるという認識を持ち仕事に邁進していく必要があるのだと感じました。
また、放課後等デイサービスも様々な職種が入り混じる職場です。職員同士での密な情報共有が重要視されている中で、両病院で行っているミーティングも情報だけではなく、情緒(気持ち)も含めて共有するなど職員を大切にする姿勢は当法人でも取り入れていくべきであり、昨今の社会において最も重要なことの一つではないかと思います。
のぞえの丘病院内にある児童思春期病棟は福岡県内初で、子どもたちの精神科医療における先駆的な役割を担っています。入院という非日常的な環境の中でも、子どもたちがその子らしく過ごせるよう工夫された病棟の姿は、放課後等デイサービスに携わる者として深く印象に残るものでした。入院治療を終えた子どもたちが地域へ戻る際の受け皿として、私たちのような事業所が果たすべき役割の大きさを改めて実感しました。医療と福祉、そして教育が連携し、子どもたちの「地域生活」を途切れなく支えていく視点は、今回の研修会全体を通じたテーマとも重なるものでした。
「小規模多機能病院だからこそ可能な地域生活を支援する取り組み」では、規模の小ささをあえて強みとして捉え、地域の多様な社会資源と柔軟に連携していく姿勢が示されていました。「顔の見える関係」を地域の中で丁寧に積み上げることが早期介入や再入院防止にもつながるという視点は、放課後等デイサービスの運営にも通じる哲学だと感じました。
同じ久留米市内で機能する病院と放課後等デイサービスは、地域という同じフィールドに立つ支援者同士です。しかし日常業務の中で両者が具体的に連携する機会は、まだ十分とは言えません。今回のような研修会への参加を通じて顔の見える関係を築き、互いの役割や強みを理解し合うことが、子どもや家族にとって安心できる地域支援ネットワークの構築につながると思います。
作業療法士として放課後等デイサービスに勤務する立場として、日々の療育にとどまらず精神科医療との架け橋となる視点を持ち続けることが求められています。子どもの発達や行動の背景には、専門的介入が必要なケースも存在します。地域の精神科医療機関との連携をスムーズに行えるよう日頃から関係性を育んでおくことは、支援の質を高める上で欠かせない取り組みです。
今回の参加は、互いの存在を知り、敬い、補い合う関係を築いていく第一歩となりました。地域で共に子どもたちの未来を支えるという使命を胸に刻みながら、これからも学び続け、実践に還元していきたいと思います。 |
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