杉山理事長からのご挨拶
 この度は、一般社団法人日本精神科救急学会のホームページをご閲覧頂き、大変有難うございます。
 当学会は、1993年に千葉県精神科医療センターの計見一雄名誉センター長が創設し、精神科救急研究会として4回の開催を経て、1997年から学会として発足、同年初めての学術集会が北里大学の村崎光邦教授を会長として開催されました。昨(令和4)年秋に埼玉で開催された学術総会で記念すべき30回を迎え、第31回は本年10月6日~7日に山口県(KDDI維新ホール)で開催を予定しております。
 わが国の精神科救急医療は、1978年に東京都で始まったとされます。あと数年で半世紀を迎えますが、精神医学の長い歴史に比べれば、生まれて間もない領域です。急性期に特化し、即応性を求めるという点で時代の要請に呼応しており、求められるのは技術の高さや最新知識、体制の充実度・完成度といった点で精神医療における最先端領域ということができるでしょう。
 学術団体である学会の使命は領域の最高水準を目指すことにあり、本学会もそのように活動してきました。2002年に創設された「特定入院料」における「精神科救急入院料(俗称スーパー救急)」は、初代計見理事長の先見性とその構想に基づく実践が評価され、制度として具現化したものと理解できます。従来の精神医療のスタイルとしては破格の、集中的な人的資源の投入、多職種医療、充実した-ハードウエア、常にアウトカムを求められるという緊張感により、我が国の精神医療に大きなインパクトをもたらし、牽引的存在となってきたことは間違いありません。その後「精神科救急入院料」は加速的に普及が進み、徐々に課題が指摘されるようになりました。2022年度の診療報酬改定では大幅に見直され、新制度に移行しましたが、今も課題は多く残され、常に最適な在り方を目指して進化し続ける必要があります。
 並行して推進されたのが厚生労働省と都道府県・政令市による「精神科救急医療体制整備事業」(1995)です。本学会は専門家会議や厚生労働科学研究等を通じて本事業に提言し、わが国の精神科救急医療体制、ひいては包括的な地域精神医療体制の構築に尽力してきました。今や精神科救急医療は全国展開し、その経験や技術は指定医資格、専門医資格などでも求められる必須のものとなっています。そしてさらに重要なコンセプトは、新たな長期在院者を最小化するという点にあります。実のところ、精神科医療の主軸が地域ベースに移行することが本学会の真の目的です。そしてそれは、急性期の技術や知識の向上、体制の充実を目指すことで具現化します。事実、高規格病棟での新規入院者の退院率は全国平準に比べて高く、地域ケア体制の構築に向けた効果の高さを明確に示しています。今後わが国が増々この傾向を加速させ、地域を中心とした医療やケア体制への変革を成し遂げるためには、救急・急性期入院医療の充実は必須となります。
 さらに学会は、科学的な側面からの診断精度と治療技法の向上、社会保障制度上の課題解決に取り組んでいます。厚生労働科学研究への協力、各機関での研究的取り組みの推進、情報共有とディスカッション、学習機会・教材の提供、政策提言などを精力的に行い、その対象領域は精神科急性期医療における病態学・精神病理学・行動医学・診断学・治療学のみならず、医療政策、社会精神医学、司法精神医学、規制薬物や嗜癖に関する課題、看護学、臨床心理学、リハビリテーション医学、精神保健学、災害医療、自殺予防学、一般救急医療、老年精神医学、児童精神医学…など多岐にわたります。
 精神科医療を志す会員の皆様、あるいは未だ学会の会員でない方にはぜひご入会をご検討いただき、皆様と熱い議論を交わし、この国の将来を夢と希望のある社会に近づけるべく、ともに活動していきたいと考えております。どうぞ宜しくお願いいたします。
第四代理事長 杉山直也
一般社団法人 日本精神科救急学会事務局
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